☆安全に滝めぐりする為に

最近、シンクロニシティのごとく安全に関する話題を多方面より頂きました。
そこで今回はそれについて当ブログの管理人の考えを述べたいと思います。


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迷滝

【安全に関して気になった最近の事件】

①2年前(2006年春)に起きた、双門の三の滝で8名の滝メグラーが遭遇した犬落下事件
「滝をめぐる人たちへ」
*ttp://www.d1.dion.ne.jp/~yandr/2006.05.04somon-off.htm
(直リンクはご許可頂いておりませんので*→hに変更してアクセスをお願いいたします)
ことの要諦は、滝めぐりの難所として知られる大峰の双門滝への危険な急斜面を犬連れ登山された方がおられ、不幸にして犬がこともあろうに滝に滑落しました。
このコースは32本もの垂直に近い階段や鎖場、岩場の人間でも躊躇する危険なコースでありもともと犬を帯同するのは無理がありました。

落下した理由は簡単です。
階段梯子や鎖場は、人間に合わせて作られており、四足歩行の生き物にとっては滑落しそうになった場合確保が難しいのです。
サルから進化した人間の手は鎖や木の根っこや階段の手摺り、岩の角などを掴みやすい構造をしています。それに比べ犬はもともと草原やブッシュの生活に適合して進化しておりこうしたものを掴んで自分の安全を確保することができません。
いざバランスを失った時、彼らの手足は、ものが掴めない為一気に落ちていく可能性が高いのです。

山での岩場の移動では3点支持が欠かせません。
これは言い換えると、最低でも一本の手が岩なり何かをホールドしていると言う意味です。

人間は場合によれば手一本で体重を支えることも可能です。
一方犬の手足は岩の上に乗っていても岩そのものをホールドはできませんから足が滑るなどしても滑落を阻止することが難しいと言えるでしょう。

この事件を現場で目撃された8名の方の一人はまさに犬を連れてくる場所ではなかったと飼い主におっしゃってます。

(HPの本文より)
犬を山や滝に連れて行く人、
子供や技術を伴わない人を山や滝に連れて行く人、
技術や体力に自信がないのに山や滝に行く人、
この出来事を読んで、少しでもいいから、安全に対して考えてみてください。
自分や周りの人の安全を念頭において、自然を楽しんでください。


②もうひとつの真実
祖母山で実際にあった事件ですが、ご夫婦が犬帯同で梯子から落下して大怪我をされたことがありました。
「犬連れ登山での事故について」
*ttp://www.geocities.jp/yuu_yodakinbo/dog1.html
この事件は嫌がる犬を強引に梯子を登らせた結果犬が錯乱したことが直接の原因ですが、
そもそも計画に無理がありました。

(HPの本文より)
 夫婦と犬(ゴールデンレトリバー?)約40kgが祖母山の黒金尾根登山道から山頂近くのハシゴ場にさしかかりました。犬はハシゴをなかなか登ろうとしない。いやがるのを無理に奥さんがつないだロープを引っ張り、旦那さんが犬の尻を押し上げるというやり方でハシゴを登り、ハシゴのたびごとにそれを繰り返した。鉄ハシゴにかかった時、突然犬が豹変し、旦那さんに襲いかかった。鉄ハシゴ5mの中間部から犬と同時に下の岩場に4m転落、奥さんも引っ張られるかたちで落ちた。

山がポピュラー化し、犬もペットとしてではなく家族あるいはパートナーとして登山や滝めぐりに参加させてやりたい。大の犬好きの私もそういう気持ちは理解できます。
管理人は山でも犬に出会ったら犬の方から近寄って擦り寄られたり小型犬だと肩に登られたりします。犬の方が犬大好きなオーラを感じて安心して近づけるからです。
そんな管理人もこと、

 鎖場、急な岩場、片方が崖、急な梯子や階段、その他人間でも落下の危険がある場所

こういう場所には絶対犬を連れて行きません。犬がかわいそうです!
最近の登山靴が進化して滑りにくく安全になっていても犬の手足は昔のままの肉球のままです。
鉄の梯子や岩場は、滑りやすく犬が本能的に自己防衛に陥ったとしても犬に罪はありません。

犬は高い場所が苦手です。
でも、犬に人間をリーダーだと認識させて、訓練すればかなりの山にも帯同できる可能性はあるでしょう。それにしてもこの事件は、犬が感じている危険に人間がもう少し配慮すれば防げて居たでしょう。仮に旨く登れたとしても人間に従うしかない犬にとって登山はあくまで主人を喜ばす過剰適応でしょう。
本当に犬が好きならこうした危険な選択ではなく、もっと広々した草原のような場所でのびのび犬を走らせてあげることが犬にとっても良いと思います。もちろんそれは犬をあくまで中心に考えての話であり、管理人も犬同伴の登山全てを否定するつもりはありません。
要は場所、条件を間違うと人間であれ犬であれ大変な危険を背負い込む恐れがあるということです。

二つの事件に共通することは犬の体の特性や犬の可能性を過大に解釈してなんでも人間と同じように行動できると錯覚することから生じたことです。パートーナーであっても連れて行ってはいけない場所があるのです!
犬の気持ちに立てば、別のアプローチの選択は可能であったことでしょう。

③さて、最後に渡辺さんの報告によれば、六字ノ滝で遭難者が出たとの事でした。
比較的身近な方からのこういうご報告を目にした時、管理人も身が引きしまるというか安全について考えざるを得ませんでした。
直接の遭遇でなくとも山での事故は他人事ではなく、かなり衝撃的なことでした。

④つい最近行った風折滝へのツアー
 ここでは情報が不足し、転倒して危険な状態が生じました。油断があったでしょうか。

⑤以上の事以外に周囲の方からも暖かいご注意を頂いております。
この際、ここで安全を見直し、再出発といたしたいと考えた次第です。

また管理人はライフワークとして大峰や大台の自然風景写真を撮り続けており、岩屋谷や双門以外にも危険度ランクの高い大滝(大峰2箇所、大台4箇所)を計画しておりますが、計画そのものを一旦ゼロにして再度安全点検を行っているところです。
管理人の提唱する身体性を重視する写真の撮り方は、山の深い懐に飛び込み水の冷たさ、岩の険しさを肌や体で体験したその感情、思考をそのまま映像とするのを基本にしております。
それゆえ当分はある程度のリスクが生じます。リスクを最小限に留めること、そこがポイントであり、それには十分過ぎる危険度分析が必要なのでしょう。

他人の採るリスクをいくら指摘できても自分の中に存在するリスクが分析できず認識もなければ、そこに安全確保もなく、安全の保障もありません。
最近はデジマンさんのHPや私のHPの写真をご覧になりご自身もこれらの滝に行かれる方も増えたと聞き及びます。
そこで管理人の失敗例をここであえて紹介し、管理人自身の棚卸の始まりとしかつ皆様方におかれましても安全についての安全考察の一助にして頂ければ幸いです。

Ⅰ.管理人の失敗(岩屋谷雌滝(2006年秋)でのリスク)
このツアーは単独で上北山村の白川又川の支流である岩屋谷の滝を稜線から目指したものでした。
結果的には無事帰還しましたが、無理がいくつかありました。
岩屋谷の雌滝は岩屋谷の源流付近に位置し片道4時間、中間の小峠山を経て稜線から岩場のルンゼを落差200m+α下った谷底にあります。

(計画)
沢屋さんの記録を参考として、2万5千分の1の地図を分析し下降するポイントを地形から選ぶ作業をまず行いました。谷の弱点(もっとも通過に適している場所)を見つけ、全体の行程時間を割り出したまでは良かったですが、この時点では有力なアドバイザーが不足しておりました。

(check point1)
情報収集が一番肝心です。地図に載らない細かい地形は現場を知っている人間からの直接の情報収集が絶対必要です。ややこしい場所であればなおさらです。
事前に調べを十分にすれば後述の無駄な時間が省けたのです。

さて計画ができたものの日程や時間の都合で一緒に行けるパートナーを募ることができませんでした。単独としたのも目的地に到達できるかどうか不明であったので自信を持って参加してもらう材料も不足しておりました。

(実行)
小峠山から取り付きのルンゼまでは、とても順調でした。
しかし現場の谷は、地図に比べ大変複雑な地形でしかも木々が視界をさえぎっておりました。
そこで谷の全容を確認する目的で右側の稜線の岩の出っ張りから観察しました。
実際に下降したルンゼはこの岩場の隣の岩場のすぐ左にあり、狭いガレ場になった沢を降りました。
最初からここに取り付いていれば
  無駄な体力の消耗がありませんでした!

さてこのルンゼの頭で靴を登山靴から沢靴に履き替えます。
尚、この日の為にアクアステルスなる沢靴を準備しました。事前の分析により岩場越えがメインになることは予想されておりました。そこで水中のホールドが良いフェルト底より岩場中心のステルス底に決定しました。

 (check point2)
靴に関しては情報が集まりやすい量販店で良く聞き、さらにレポートも良く研究しました。
 無事に安全に昇降できたのは靴のお陰であり管理人の技術力ではありません。
 靴は少々高くとも場所に合ったものを使いましょう!

ここを誤解することは不幸です。
こと山や滝めぐりで靴の選択が安全か危険かの分かれ道になる可能性が高いのです。
地形の特性を良く考えないと事故の元になるかもしれません。

途中のカレ滝もステルスのお陰で楽に通過できました。カレ滝を越えてまもなく滝が見えました。
感動!大声を出して緊張がいっぺんに切れました。
雌滝の写真を一通り撮り、時間が迫りましたので還る準備を始め再びルンゼの下に移動します。
なんでもない岩場を通過した時、思わず滑って転び手を突きました。手を見るとナイフで切った様な傷が岩のエッジでできたようです。出血が止まりませんでした。

事故とは気の緩みの直後に襲ってきます。ステルスと言えどもぬるぬるした岩では滑りますし、まして油断して岩場を歩けば転倒に対する防御姿勢が遅れます。

何でもない岩場が、その岩場にある無数のエッジが時として凶器になりえます。
無数の凶器がそこらじゅうに散らばっている・・・それが沢であり岩場の特徴です!

血が止まるまで休む暇もなく、手を押さえて出血を止めながらルンゼの登り返しを行いました。
歩いてきた道に点々と血の跡が続きます。
計算上稜線まで200+α、出血は高々150ccぐらいでしょうか。骨を折ることを考えればたいした怪我ではありません。

(check point3)
 だからと言って山の怪我は小さな傷でも感染症で敗血症になったりした場合近くに病院がありません。安全を考えると、最低でも止血手段や消毒手段が必要です。

その後のツアーでは、消毒用のイソプロピルアルコールを持参する契機になりました。
無事な生還を保障するものがわずかな食料だったり、医薬品であったというケースもあるでしょう。
冬場近くならツェルトで生死の分かれ目であったということもあるでしょう。
最悪のケースも想定した装備を見直す出来事でした。
しかしこの怪我で管理人の心の中であせりが生じました。

帰還する為に稜線に戻り、ふもとを目指しました。既にPM2時を回っており、早く帰ることに夢中で周囲の地形を良く見ておりませんでした。

(check point4) 
 気が付くと獣道を歩いていました。登山道に戻る為、30分近い時間を藪コギに費やして無駄な時間と体力を奪われました。
山での焦りは事故や遭難の危険度を高めます!

焦りが生じないよう、計画自体に十分な余裕が必要です。余裕がないとひとつ歯車が狂いだすとどうなるか予想が付きません。

周囲が薄暗くなるころようやくふもとの白川に到着しました。嗚呼、疲れた。
満足感やら恐怖感やら失敗感やらなんだか不思議な気分でした。

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以上、管理人の恥は承知で皆様にも安全をお考え頂く契機となればと考えます。

ポイントは纏めますと
①全ての行動は計画の緻密性の想定範囲内であるべきです。
 したがって予期しない状況に遭遇した場合、その計画に欠陥があるものと
 考え計画の中止または変更も辞さない覚悟が要ります。
②良きパートナー、アドバイザーを得ること
 情報は正確なソース、パートナーは目的や体力、技術力で協力できる良い関係を
 管理人は、本格的な滝めぐりの最初(摺子谷大滝)でYMさんから正しい情報を得て
 デジマンさんというパートナーと一緒にツアーを行いました。これは幸運な出発だったでしょう。
 情報も無くまたパートナーも不足していれば危険度はもっと増していたと考えます。
③装備は、現場に合ったものを
 道が凍っていればピッケルが要るかもしれません。
 何がどんな場合に要るか、常に考えて準備したいものです。
④心のゆとり・・・周囲に万遍無く注意を向け危険を予知する能力を磨く必要があります。
 同行者が危険と言えば無理に進まず、どの要素が危険か良く見極めて、ルートを考えることが大切です。無理を承知で進むこと自体こころに余裕があるはずもありません。

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まだまだ危険はそこそこ経験しましたが、きりがありませんので今回は割愛します。
要は安全とは認識に関わっています。危険とは自分の状況や周囲の状況を正しく認識できないことから生じます。
認識が生じなければそれに対応する行動も起こさないのが人間です。
楽しい滝めぐりも危険と隣合わせなのは、どんな谷でも同じです。

皆様方の今後の滝めぐりや写真ツアーが安全で楽しいものとなるよう、拙文を最後までお読み頂いたお礼として祈念いたします。感謝。

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RE:同感です!

ヒロさん☆
ご同意ありがとうございます!
去年から今年にかけて大峰では毎年遭難者を出している訳でして決して他人事ではないですよね。
山岳保険にプラスして大怪我の場合は入院保険あるいは休業保険も必要になってくるケースもあるでしょう。生命保険は考えたくないですが、既に入りました(^^;
何があるか判らない大峰ですから常々備え有きですね。

同感です!

沢に100%安全ということはありえません。
常に最悪の事態を想定して計画をすることが大切ですね。私も大峰で一回、龍神で一回死に掛けたことがありますが、原因はやはり油断や、無謀な行動にあります。たまたまこうして生きておりますが、それは単に運が良いだけで、死んでいた可能性も高い訳で反省する点は大いにあります。いちかばちかは絶対にダメですね。慎重すぎて丁度良いと思います。
ところで皆さんは山岳保険に加入されているでしょうか? 私は10年前くらいから毎年加入するようにしています。沢登りのような危険度の高い山行に適用される山岳保険です。事故発生時には捜索救助費用が莫大にかかります。万が一の時の為にも、加入が安心だと思います。私が加入しているのは1年間有効の掛け捨てタイプで8,000円程度です。

RE:ビビリでいいかも

そうるさん☆
ありがとうございます。
怖いと言う思いは、大切ですよね。これが無ければ匹夫の勇というか自殺行為です。
私も以前大台の中の滝から下を眺めた時は、ロープで体や三脚を繋いでおりました。突風が吹いたりした場合崖は相当やばいです。

>犬に無理強いする気持ちが
そうなんですよ。犬の目をちゃんと見てあげているのか、①の事件だって読んでいて不覚にも涙が出ました。良くがんばったワンコ、その遺体を放置する人間、犬の気持ちをもっと大切にしたいものですね。

RE:びっくりしました。

パンダさん☆
丸太は登山靴も滑りやすく本当に嫌ですね。
丸太橋といえば黒石で掴んだ丸太が折れて谷に丸太が落下した思い出があります(冷汗
>無理のない範囲で計画してください
ありがとうございます。
とりあえず一番楽なコースから着手しますのでその時は声かけさせて頂きますね。よろしくお願いいたします。パンダさんのHPのテーマも紀伊半島ですから、拙ブログとは共通する部分が多いと思います。2+4以外にも行きたい場所がたくさん放置されており、死ぬまで掛かるかもです(笑

RE:思ったこと。

YHさん☆
いつもありがとうございます。
YHさんは四季を通じて果敢にいろいろな写真の可能性をチャレンジされている点で管理人も参考にさせて頂いております。
私も実は大変臆病であり、それ故か大事故に至らなかったのだけかもしれません(笑)
最近は、地図からその地形が映像で浮かび上がり素描できるくらいになり、実際の現場風景との相違を楽しんでおります。
沢はこれからのシーズン楽しいですね。写真をされている方は、機材の加重もありますので更に大変だとお察しいたします。いつか専門家のご意見も参考にセルフビレィや機材の引き上げについて考えてみたいと思っております。

ビビリでいいかも

まいどです!
私は高所恐怖症なもんで高い所では足がすくみます。
・・だもんで怖いと思うところには近寄れません。
もっと勇気があれば絶景が見れるのかもしれませんが
自分はこれでいいと思っています。
私も犬好きなので犬に無理強いする気持ちが
まったく理解できません。
何事も無理は禁物ですね。


びっくりしました。

先日、初めて犬を連れて滝に行ってきたところです。(三ノ公の明神滝)
整備された登山道ですが、丸木橋のいくつかは犬が怖がった為に抱っこして渡りました。いろいろ反省する点があります。いつもの単独行の危険も考えなければなりません。
危険度ランクの高い大滝(大峰2箇所、大台4箇所)を計画されているとのこと、どうぞ無理のない範囲で計画してください。また、お邪魔でなければ、声をかけてください。

思ったこと。

ふぇるめーるさん考えさせられることばかりです。私もやる気はあるけれど機材の重さや腕力のなさテクニックのなさ精神的に弱い部分等々数え上げたらキリがありません。あるのは自分の技量で行けるか行けないかの判断くらいです。好奇心が旺盛なので良いことも裏目にでることも。今までの自身の行動を振り返るよい機会になりました!
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